ふらんす探偵
2006-07-30T07:20:49+09:00
stmohren
フランスのミステリの感想などです。
Excite Blog
フレッド・ヴァルガス『永遠の森の中で』
http://stmohren.exblog.jp/3901052/
2006-07-30T07:20:49+09:00
2006-07-30T07:20:49+09:00
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ミステリ
Fred Vargas, Dans les bois eternels (Viviane Hamy, 2006)
アダムスベルグ警視を主人公とするシリーズの続きで、
新たな登場人物として、彼の少年時代(フランス南西部
ベアルネ地方)に近所に住んでいたヴェランという男が同じ
部署に配属されてきます。口からアレクサンドラン(12
音節)の詩のかたちでせりふが次々と出てくるという奇妙
なクセの持ち主です。彼がアダムスベルグに何か恨みを
いだいているようなのですが、何を狙っているのでしょうか。
そんな中、パリの西はずれで殺人事件が起こったり、
ノルマンディの森の中で鹿が惨殺されたりといった事件が
起こります。それらの関係はいったいどこにあるのか、
登場人物たちのそれぞれの個性を浮き上がらせながら
話は思いがけない方向へと転じていきます。
かつて老人たちの世話をしながら次々と殺していった
看護婦が刑務所から脱走したということが分かり、
彼女が自分を逮捕したアダムスベルグに復讐しようと
しているのか? あるいはヴェランの仕返しか?
16世紀の印刷本に記された「永遠の生命」を得るため
の処方箋通りに事件が展開しているように見えるのは
偶然なのかどうか?
独特の文体に乗せられて、一気に読むことができました。]]>
ティエリ・ジョンケにタブーはない
http://stmohren.exblog.jp/2526667/
2006-01-20T08:40:59+09:00
2006-01-20T08:41:00+09:00
2006-01-20T08:41:00+09:00
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ミステリ
Thierry Jonquet, Memoire en cage (Gallimard, 1995)
身体に障害がある子供や精神薄弱の子供を収容した
病院が舞台です。頭の弱い子供が皆の見ている前で
恥ずかしげもなく自分の○○をさわったりするという話も
平気で出てきて、なかなか小説では描きにくい題材も
作者はさらりと描いていきます。
主人公は背骨に問題があって車椅子で生活している
少女で、どういうわけか母親と義父を毛嫌いしていますし、
病院の医者のひとりのことも「ゴミ」とかひそかに呼んで
嫌っています。彼女のこの気持ちがどこから来ているのか、
そこから彼女が何をしようとするのか、はらはらしながら
読者は追いかけていくことになります。
登場する人物何人かの視点が交錯しながら話が進んで
いくので、思いがけない展開に「やられた!」と感心しました。
短い小説ですが重い内容で、社会的な問題も含んでいます。]]>
ティエリ・ジョンケ『過去は白紙にしよう』
http://stmohren.exblog.jp/2424820/
2006-01-09T12:33:26+09:00
2006-01-09T13:08:04+09:00
2006-01-09T12:33:26+09:00
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ミステリ
発表した『過去は白紙にしよう』を読みました。
Thierry Jonquet, Du passe faisons table rase (Dagorno, 1994)
発表当時、フランス共産党書記長をつとめていたジョルジュ・マルシェ
をモデルにしているルネ・カステルが第2次世界大戦中におこなっていた
忌まわしい行為は、72年の書記長就任にあたってもみ消され、その事実を
知っていた関係者はソ連の派遣した殺し屋によってひそかに処刑されました。
もう誰も証拠をもっていないはずのその過去なのに、なぜか党の幹部のもとに
当時の書類がコピーのかたちで送られてきます。送ってきたのは誰なのか。
その狙いは何なのか。
書記長のスキャンダルを恐れる幹部たちはソ連と協力して犯人探しに
全力を挙げるのですが、それと並んで選挙運動中にアラブ系移民の麻薬
ディーラーを告発した共産党の政治家への恨みから、パリ近郊の党員が
発砲されるという事件が起こります。党員の女性は助かるのですが、彼女の
夫は命を落としました。
これらの流れがつながっていく展開は緊迫感に満ちていますし、結末は
悲しいものです。政治の世界の裏側を描くのでも、著者の筆力によって
それぞれの人物が際立ってきて、とても面白く読めます。
発表当時、まだ力をもっていた共産党に対する驚くべき告発の書です。]]>
ティエリ・ジョンケ『ベルヴィルの静かな日々』
http://stmohren.exblog.jp/2424727/
2006-01-09T12:22:20+09:00
2006-01-09T12:22:20+09:00
2006-01-09T12:22:20+09:00
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読書
読みました。
Thierry Jonquet, Jours tranquilles a Belleville (Seuil, 2003)
パリ東部のベルヴィルに15年以上前から住んでいる著者が
その界隈がいかに崩れていくかをいろいろなエピソードとともに
描いた本。
もともと移民の多い地域だったところに、中国人がいかに進出してきたか、
浮浪者が日常的に見られるようになったことへの反応はどんなものか、
麻薬取引がどれほど身近に行われていて、それにどう対処するか、
町の開発がどれほど乱暴になされ、それに対抗しようとする人たちの
秘訣がどこにあるか、
などなど、様々な問題点を浮き彫りにしていきます。
ジョンケの小説によく登場するベルヴィルの様子がよりよく分かりますし、
あとがきに引かれているようなメディアの反応がフランスのかかえている
問題を明らかにしてくれます。]]>
ティエリ・ジョンケ『永遠の命』
http://stmohren.exblog.jp/2389141/
2006-01-05T10:31:48+09:00
2006-01-05T10:31:48+09:00
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ミステリ
Thierry Jonquet, Ad vitam aeternam (Seuil, 2002)
アナベルという女性は、若い頃恋人の犯罪に巻き込まれ、
恋人は警察に殺害され、自分は刑務所で数年過ごすという
経歴の持ち主です。刑期を終えて出所しても働く場所は
なかなかなく、体にピアスを埋めたりする男のもとで働いて
いました。毎日、昼は仕事場の近くの公園でサンドイッチを
食べていたのですが、ある日ジャコブという中年男性に声を
かけられました。
彼と何度か食事をしているうちに、現在の境遇を脱出したいという
気持ちにさせられるのですが、それはすぐには実現できそうに
ありませんでした。ところがジャコブ氏のおかげで、雇い主の
脅迫から逃れることに成功し、彼の経営している葬儀屋で働く
ことになります。
一方、40年前に強盗に入った家の主人を殺し、奥さんと娘さんに
ひどい虐待を加えたかどで刑務所に入っていたリュデリという
男が、刑期を終えてじきに出所することになっています。
かつて虐待された娘さんは車椅子で暮らしながら復讐を誓い、
殺し屋オレグ(チェルノブイリの原発事故の被害者の一人で、
あと数年の命といわれている)を雇ってリュデリを追跡させ、
彼の正体を暴くよう依頼します。出所したリュデリは老人でしたが、
パリで暮らし始めると数日のうちに若返っていきます。いったい
これは何だ、という謎をオレグが解明しようとする過程で
ジャコブ氏とのつながりも明らかになり、思いがけない集団が
存在していたことが知らされます。
推理小説とSFがまざったような話で、緊迫感が心地よい物語
です。]]>
ティエリ・ジョンケが猛暑を語るとき
http://stmohren.exblog.jp/2213844/
2005-12-17T09:30:34+09:00
2005-12-17T09:30:34+09:00
2005-12-17T09:30:34+09:00
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ミステリ
Thierry Jonquet, Mon vieux (Seuil, 2004)
2003年夏にヨーロッパを襲った猛暑は、大勢の老人
が亡くなって遺体が処理できずに冷凍トラックの中に
詰め込まれるほどだったと報道されたことは記憶に
新しいでしょう。
この季節が舞台になった物語で、登場人物それぞれが
いかにちょっとしたことで不幸になったり幸運がめぐって
きたり、それぞれの話が入り組みあって語られていきます。
パリの庶民的な区域であるベルヴィルが中心舞台です。
登場するのは、
シナリオ作家(小説を何篇か書いたもののその後が続かず、
テレビドラマのシナリオを書いている。奥さんは自動車事故
で亡くしてしまい、その責任が自分にあると感じている)
その娘(バイクの事故で顔や胸に大怪我を負って、いまは
ブルターニュの病院で療養中。美容整形を受けて損傷を
負った部分を直そうとしている)
作家の父(シナリオ作家が子供の頃に姿を消し、世界各地
を放浪した挙句にアルツハイマーになってアフリカからフランス
に戻され、道をさまよっているところを保護され身元不明の
まま入院。院長が医療費を払ってもらう親族を必死で探した
ために作家が息子と判明し、作家に連絡をとって巨額の
入院費を払ってもらうと通告。娘の美容整形費用を払うので
手一杯の作家はパニック)
ベルヴィルの浮浪者が数名
A (安く借りていたアパートを、家主の老女が勝手な都合を
言い出して追い出されたために路上で生活せざるをえなくなり、
地下鉄でお金をもらったりして暮らしているうちに強盗を働く
ようになったものの、ある日追跡者から逃げる途中で骨折して
どんどん転落していく人。作家が父を殺そうとしている話を
聞きつけて作家をゆすることを思いつく)
B (浮浪者の一団を仕切る男。子分たちに金を集めさせ、
それを巻き上げて酒びたり。勝手な規則を作ったりいかがわしい
ことをしたりしている。浮浪者 A は一時この集団に入っていた
ものの、ピンはねされるのがいやで抜け出す。その結果が
どうなるか)
などなど、人生の思いがけない展開がちょっとした加減で
いかに変わるか、はらはらしながら話を読むことができます。
一気に読める面白い本でした。]]>
ドミニク・マノッティ『われらの素晴らしき汚職時代』
http://stmohren.exblog.jp/1944617/
2005-11-22T09:20:58+09:00
2005-11-22T09:20:58+09:00
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ミステリ
読みました。
Dominique Manotti, Nos fantastiques annees fric
(Rivages, 2001)
フランスのミッテラン大統領(実名で登場)の側近を務める
悪い奴が中東で人質になった人たちを解放させるために
武器を密かにイランに売ろうとしたものの、武器を乗せた飛行機が
トルコで墜落してしまうという事件をめぐって、それを誰が
やったのか探ろうとしたり、武器の密売を告発する動きを
止めようとしたり、といった様々な策謀がうずまく話です。
次々と殺人事件が起こっていやはやという感じで、
政界裏事情をいろいろ教えられても・・・あまりそういった
ことに興味のない読者にはピンとこない話でした。
2002年にミステリ批評家賞をとった作品です。
著者は大学で19世紀経済史を教えている先生だそうで、
彼女はほかにも色々な素材で本を書いていますが、
専門分野とか大学関係とかはそれほどミステリの題材に
なりそうにないので書かないとインタビューで語っています。
]]>
クロード・アモズ『焼林』
http://stmohren.exblog.jp/1944568/
2005-11-22T09:10:45+09:00
2005-11-22T09:10:45+09:00
2005-11-22T09:10:45+09:00
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ミステリ
Claude Amoz, Bois-brule (Rivages, 2002)
「焼林」と呼ばれるアルゴンヌ地方(シャンパーニュ地方と
ロレーヌ地方の境、第1次世界大戦の激戦地)の人里離れ
た家で起こったある出来事(それは最後に明かされます)
を中心にして、一方の話はその事件の数日前から事件当日
へと向かい、もう一方の話はその事件の1ヶ月以上後から
の数日間を追います。両者の話が交錯して語られます。
事件直前の話は、ある中年男性が突然仕事をやめて、
ある有名女性歌手が買った田舎の家が、自分の幼い頃
夏休みを過ごした家に違いないと思い、その家に向かって
いくのですが、途中でいろいろ大変な目に会うという話です。
一方、事件の後の話は、事件がトラウマになっている人たち
がその事件の真相は何だったのかを探ったり、自分がしたこと
を後悔したり、というもので、一体何が起こったのか、予想と
違うことが分かってきて、最後にまた驚かされるという展開
です。
人物それぞれの抱えている問題、過去の呪縛、意外な人物
の暗い面、どれをとってもおお!とうならされる物語でした。
Le Prix Mystere de la Critique (ミステリ批評家賞)を
2003年にとった作品です。]]>
ブルゴーニュの酒蔵で
http://stmohren.exblog.jp/1849521/
2005-11-14T08:23:24+09:00
2005-11-15T02:39:05+09:00
2005-11-14T08:21:10+09:00
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ミステリ
Claude Amoz, Le caveau (Editions Hors Commerce, 1997;
J'ai lu, 2000)
ギヨームという恋人が寝ているすきにマリーヌという若い女性は
家を出て、地中海に向かってヒッチハイクをしようとします。ところが
乗せてくれたぶどう酒農家の中年男性の家に寄ることになります。
一方、パリの郊外で働いていたアントワーヌという中年男性は、
父親が死んだ日に錯乱して失業し、弟の家に居候していたのですが、
あるときスーパーのワイン・クイズに当たってブルゴーニュ地方の
農家に1週間滞在することになります。それがマリーヌが寄った家
だったのですが、農家の家族の雰囲気がどうも変だと思ったアント
ワーヌはいろいろ調べているうちに、マリーヌという女性が殺された
のではないかと疑い始めます。地下蔵に秘密の部屋があるらしい
とか、誰かが描いた絵があるとか、謎が山積です。
そのうちに村で物乞いをして暮らしている男が毒殺されるとか、
アントワーヌが借りて乗っていた車のブレーキが急にきかなくなる
とか、誰が悪意をもっているのかわからないままにいろいろな事件が
起こり、1年前の収穫祭のときにも騒動が起こっていたこともわかり
ます。
真相が解明されたかと思うとひっくり返される、スリリングな話でした。
ボージョレ・ヌーヴォーの季節にふさわしい、ぶどう酒作りにいそしむ
農家の怖い話です。]]>
ルイ15世の死
http://stmohren.exblog.jp/1826409/
2005-11-12T09:54:33+09:00
2005-11-15T02:39:05+09:00
2005-11-12T09:52:27+09:00
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ミステリ
描くニコラ・ル・フロックものの第4弾、『ニコラ・ル・フロック
事件』を読みました。
Jean-Francois Parot, L'affaire Nicolas Le Floch
(10/18, 2002)
今回は主人公の恋人が毒殺され、その犯人として彼が
疑われるという話です。何者かがニコラを陥れようとして
いるために、様々な証拠が次々と挙げられていきます。
ニコラの足跡が恋人の寝室についていたとか、恋人の
遺言で彼が全財産を継承することにされていたとか。
ニコラの失脚をねらう人々の中には政府の高官もいれば、
当時ノートルダムのオルガン奏者でマリー・アントワネット
のハープシコード教師でもあったバルバトルもいます。
このシリーズ第1巻で登場したバルバトルが今回はさらに
暗躍していて、いったいどうなるんだろうとハラハラさせ
られます。
その話と並行してルイ15世からロンドンにいる中傷文書
の著者と交渉するように命じられ、ニコラはフランスから
イギリスに渡るのですが、その旅の途中でも何度も襲われ
そうになります。
無事に交渉に成功して帰還するものの、国王は病気で
さんざん苦しんだあげくに没します。この逝去の場面は
読者に強い印象を与える、臨場感いっぱいのところでした。
手に汗を握るような緊迫感があります。
国王が交代すると当然、側近たちは新たな王様に取り入ろう
と策謀を始めるわけで、そのあたりも興味深い読み物に
なっています。
いままでのシリーズで話のリズムに一番よく乗ることが
できました。]]>
ニコラ・ル・フロックのシリーズ第3弾
http://stmohren.exblog.jp/1740949/
2005-11-05T17:42:35+09:00
2005-11-15T02:39:05+09:00
2005-11-05T17:39:34+09:00
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ミステリ
ニコラ・ル・フロックものの第3弾、『ロワイヤル通りの幽霊』
を読みました。
Jean-Francois Parot, Le fantome de la rue Royale
(10/18, 2001)
アレクサンドル・デュマの『ジョゼフ・バルサモ』でも描かれて
いましたが、1770年5月30日にルイ15世広場で皇太子
ご成婚を祝って催された花火では、大勢の群衆が集まる中、
花火の事故が起こって火災となり、避難しようとする貴族や
民衆が将棋倒しになり、多くの死者が出たのでした。
デュマの小説では主人公の活躍に焦点が当てられていました
が、こちらの話では本来警備に当たるはずだったニコラ・ル・
フロックの視点から描かれていて、大勢の死者の中に首を
しめられたとわかる若い女性の死体を発見することから
謎の解明へと進みます。
女性がサン・トノレ通りの毛皮屋の娘だということはすぐに
わかるのですが、その家の人たちは誰もが秘密主義で、
捜査に協力してくれません。別の若い娘は悪魔に憑かれて
いて、悪魔払いのエピソードもあり、いったいどこに話が進んで
いくのかとハラハラさせられます。
小説家のレチフ・ド・ラ・ブルトンヌまで登場して、意外な
犯人がわかりますが、犯人以外の人たちもそれぞれ大きな
問題をかかえているのでした。
革命前のフランスの混乱がよくわかる小説です。]]>
ティエリ・ジョンケ『野獣と美女』
http://stmohren.exblog.jp/1698840/
2005-11-02T08:32:57+09:00
2005-11-15T02:39:05+09:00
2005-11-02T08:30:56+09:00
stmohren
ミステリ
Thierry Jonquet, La bete et la belle (Gallimard, 1985)
パリ郊外の中学校で教師をしている男が、
不倫をしている妻を殺し、頭がおかしくなって
ゴミを捨てなくなってあらゆる汚物をゴミ袋に
入れて、家中にそれを積み上げてしまいます。
彼の趣味は鉄道模型で、家には線路をめぐらせて
小さな列車を走らせて遊んでいるのですが、
そのまわりにはジワジワとゴミ袋がたまって
いきます。同居人として謎のレオンがいて、
彼はレオンと暮らしながら自分のしたことを
カセットに録音しています。
物語はレオンの語り、刑事の語り、カセットの
録音の再生といった複数の目から見られて
います。
日本でも話題になっているゴミ屋敷の醜態が
フランスでも存在するようで、作者は本当に
あった事件をもとに物語を作ったようです。
最後にアッと驚く仕掛けがあって、度肝を抜かれ
ました。老いた乞食だと思っていたレオンが
実は○○だったとは!!
La Bibliotheque Gallimard という高校生向け
の注釈や問題が入った叢書で読みました。
作者のインタビューや解説が予想以上に
面白くてお得な一冊です。]]>
ローランス・ルフェーヴル、リリアヌ・コルブ『子供たちまで』
http://stmohren.exblog.jp/1685205/
2005-11-01T07:16:18+09:00
2005-11-15T02:39:05+09:00
2005-11-01T07:14:17+09:00
stmohren
読書
リリアヌ・コルブのブキニスト姉妹は児童書を何冊も書いていましたが
そのうちの1冊、『子供たちまで』を読みました。
D. L. さんからのプレゼントです。ありがとう!
Laurence Lefevre et Liliane Korb, Les enfants aussi.
Juillet 1942 (Hachette, 1995; 2000)
1942年7月14-16日の3日間に、ユダヤ人の幼い姉妹ふたりに
起こったできごとを長女の目から描いていきます。ドイツ軍がパリに
侵入してきて、ユダヤ人は黄色い星印を洋服に縫いつけなくては
なりません。公園やトイレ、映画館などにユダヤ人が入ることが
禁じられたり、地下鉄もユダヤ人専用車両を設けたりと、さまざまな
差別が行われています。食糧を入手するために並ぶ時間も制限
されていますし、働くこともできません。
どうしても映画が観たくて星印をつけずに妹を連れて出かけた姉
ですが、上映の途中でトイレに行きたくなった妹のために、映画館
のトイレにふたりで入るのですが、ドアが固くて出ることができません。
そのうちに映画の上映は終了し、映画館は閉められ、ようやくトイレ
から出たふたりは映画館の中で一晩過ごすことになります。
ところがその晩、ユダヤ人が一斉に集められ、収容所に送られる
ことになるのでした。ふたりは近所の人に助けられて移送されずに
すむのですが、知っている顔が車に乗せられていくのを見るのは
何と悲しいことでしょう。
児童書とはいえ緊迫感に富む本で、『ホタルの墓』のようにアニメ
にしたらよさそうです。]]>
ニコラ・ル・フロック第2弾
http://stmohren.exblog.jp/1671152/
2005-10-31T08:30:19+09:00
2005-11-15T02:39:05+09:00
2005-10-31T08:27:26+09:00
stmohren
ミステリ
18世紀のパリやヴェルサイユを描くシリーズの第2弾、『鉛を
飲まされた男』を読みました。
Jean-Francois Parot, L'homme au ventre de plomb
(10/18, 2000)
冒頭で、主人公はラモーのオペラ「パラダン」の上演を聞きに
出かけます。前作でバルバトルを招いて自宅演奏会を開くという
エピソードがあっただけに、当時の音楽会の雰囲気がわかり
ます。ルイ15世の娘が会場に来るとあって、ニコラはその
警備にあたっていたのでした。
すると、国王に仕える貴族の子息が自殺したという知らせが
来て、ニコラはその現場にかけつけます。そこから話がいろいろ
複雑に錯綜して、国王に近いところで策謀がめぐらされていたり、
イエズス会の暗躍が表に出てきたり、王の命を狙う者がいたり、
などなど、めまぐるしく展開します。最後もいくぶん謎を残す
終わり方になっていて、余韻が楽しめます。
途中、身元不明の死体の安置所でセーヌ川のウナギを食べる
場面があって、川で死体を食っているようなウナギは食べられない
と登場人物のひとりが言うと、調理をしてくれた安置所番人が
いかにおいしいかを力説するところは生々しくて印象的でした。
続きが楽しみです。]]>
オリヴィエ・ブレ『パステル』
http://stmohren.exblog.jp/1598827/
2005-10-25T21:37:24+09:00
2005-11-15T02:39:05+09:00
2005-10-25T21:35:25+09:00
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読書
歴史小説『パステル』を読みました。
Olivier Bleys, Pastel (Gallimard, 2000)
先祖代々、赤の染色職人をしていた家系の子であるシモンは、
父親のもとで脚光を浴びることもなく働くのに不満を感じています。
ある日、青に染めた布を売ることを職業とする男に出会い、シモンは
にわかに青の染色職人に転向します。森の中の小さな聖堂で見た
聖母マリアの像の青色が神秘的に美しかったことも彼のこの転向に
拍車をかけたのでした。
このシモンが理想の青を求めて工夫に工夫を重ねるところは
なかなか読ませますし、中世末期の染色組合の様子などが
生き生きと描かれているところは楽しめます。赤の染色と青の
染色がまったく別のアトリエで行われるものだったというのは
ミシェル・パストゥローの『青の歴史』(筑摩書房)で言われている
通りです。
とはいえ、後半の展開が唐突で、登場人物の行動があまりに
単純化されているところは残念で、せっかくの題材が十分に
生かされていないように思えます。それでもこの本は
Grand Prix Georges Rinck 2000
prix Francois Mauriac de l'Academie francaise 2001
というふたつの賞をとっています。
賞をとった本でも、面白いとは限らないものです。
『エッフェル塔の怪人』でも失望し、今回も失望してしまいました。]]>
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